大判例

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矢板簡易裁判所 事件番号不詳 判決

主文

被告人は無罪。

押収に係る自転車用車体一台、同リーム二輛、同ペタル二個、同前輪ブレーキ一個、同サドル一個は被害者手塚喜太郞に還付する。

理由

本件自転車につき被告人に対しては、法律上犯罪が成立せざるものである。

即ち本件中古自転車一台につき検察官は被告人が昭和二十四年七月下旬頃其所有者である手塚喜太郞方で窃取したものであると主張し、被告人は之を否認し、窃取したるものでなく朝鮮人金森某と称する者から右自転車の部品を二回に亘り買受けたものであると主張する。

よつて之か犯罪成否の要点は、被告人が該自転車を窃取したりや否やにあるに拘らず。此の窃取行為につき直接にして且つ適切なる証拠は一点も存せない。故に証拠不充分であつて無罪たるを免るるものではない。

之に反し弁護人は被告人の妻ハナが被告人が前記の金森より当該自転車部品を買受けいたるところを見ていたと、主張し、同人を証人に申請した。

右証人ハナの公廷に於ける証言によれば、曩に矢板区検察庁に於て検察官の面前でなした供述は虚偽であつて、此の公廷に於ける証言が真実である旨を述べたから、同人のなした右供述には証拠力がないものであつて、却つて裁判官の検証の結果を記載した書面、及び其検証の際に再び前記ハナのなしたる証言は証拠とすることができる。

而して右ハナの公廷並びに、検証の際に於ける各証言と検証の結果とを綜合し検討しみると該自転車部品は真に被告人が自称金森より買受けたものであることを窺知するに足る。よつて該自転車部品は被告人が金森より買受けたものと認定する。此の故に本件犯罪は証拠不充分による無罪と云うよりも、寧ろ最初より法律上犯罪が成立せざるものであるから刑事訴訟法第三百三十六条により被告人に対し無罪の言渡をすべきである。尚右自転車の各部品は被害者手塚喜太郞の所有であること判明したから同人に還付する。

仍て主文のとおり判決する。(昭和二四年一二月二一日矢板簡易裁判所)

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